BCLブームが去って40余年、中波BC帯受信を実現するためのアンテナなどはほとんど絶滅危惧種扱いで、
既存品として目立つところではアクティブループアンテナ(MFJ-1886/ALA-1530)やApex Radio製の303WA-2(垂直アンテナ)など極めて限られる。
コメット製モービルホイップ/HA-750BLを利用する記事がネット上で散見されたが、これは期待外れであった。(中波帯受信は動作保証外)
しかし元ラジヲ小僧としては、ブーム当時「謎トラ・アンテナ」の威力を体験済み。FRG-7にも応用してやろうと思い立った。
ただFRG-7は中波帯受信にバーアンテナを内蔵しておらず、磁界誘導による結合は無理。そこでピックアップループを介しての接続となるのだが・・・
これが泥沼にハマる序章となった。
謎トラ・アンテナは、高田継男氏が「ラジオの製作」誌上で公開された、誰にでも簡単に製作できる中波受信用パッシブ式ループアンテナ。
ループ形状を正三角形としたことで、飛行機や船舶の行方不明が相次ぐ謎の海域・バミューダトライアングルに掛けて
「謎のトライアングルアンテナ」と命名された。
バーアンテナ内蔵ラジオと相互に作用し複同調式の共振回路を構成することで、目的局の選択度を上げる効果が得られる。
デメリットとしては内蔵バーアンテナとループエレメントが直交となる配置にすることと、目的局(送信所)に対して、NULLポイントを向けないこと。
ラジオとアンテナを同時に動かさなければならないので、半固定運用を余儀なくされる。実際の運用としてはNULLポイントを中心に±45°の範囲に目的局が入らぬようエレメントの位置を合わせる必要があろう。
FRG-7では、RXとループアンテナの位置関係は無視できるもののループエレメントはほぼ固定となるため、受信局によってはその方向性から利得が下がってしまう。そこで感度不足を補うために高周波増幅回路(RFアンプ)を配するのだが、これが大問題を引き起こす結果となった。その最大の問題点は謎トラアンテナ最大の特徴である「同調機能」がスポイルされてしまうこと。受信感度が最大となるようエアバリコンを回すのが「謎トラアンテナ」のキモなのであるが、
バリコンを回しても「最大感度」のポイントがない・・・のである。
浅学故にその原因が長らく理解不能であったが、RFアンプから見てピックアップループがメインエレメント(主アンテナ)となってしまい、同調ループが生み出すピークを越えてしまった・・・ということらしい。ループアンテナ自体が1辺90pのBIGスクエアループ(9回巻)でピックアップループは2回巻きであってもメインエレメントとして動作するポテンシャルを有していたのも一因であろう。ここに至ってようやく外部プリセレクタの必要性に迫られたわけである。
まずは、堀場氏の製作記事内で紹介されている、
並4コイルを利用したプリセレクタをそのまま再現製作した。ただ、私が使用したコイルはあさひ通信製のもので、バリコンは260pF(MAX)の組み合わせを推奨。
残念ながら260pF/2連バリコンが入手不可のため、単連バリコンを用い独立調整とした。結合バリコンは50pFエアバリコンを用いた。(のちにFM用ポリバリコン(20pF/2連)に変更。並列40pFとした。)
当初は剥き出しのバラック製作だったがクラフト紙で作られたコンテナボックス(立方体)に収め、RFアンプやLPFを内包しアクティブ・プリセレクタとして仕上げた。クラフト紙ボックスではボディエフェクトの影響が大きいためボックス内部に銅箔テープやアルミシートを貼り、簡易シールドを施したことでそれなりの効果が得られた。
半年ほどこの状態で活用(運用)していたのだが、バリコンを回しても同調点が出ない・・・謎の現象に見舞われた。不思議なことにループアンテナを外しても感度が落ちることが無く、プリセレクタボックスそのものがアンテナ化したような状況。何をどうしても解決しなかったので、このプリセレクタは解体。
新しいバージョンを製作。
こちらは並4コイルの代わりに小型バーアンテナを同調回路に用い、さらにアンテナとして機能させないため金属製の箱(\100ショップの灰皿缶)へ収納。
同調回路は並列2段なので、入力側・出力側を独立した箱へ収め相互干渉を抑えた。さらにアンプ回路は別筐体(金属製のあられ缶)に収めてシールド効果を前バージョンよりアップすることに成功。RFアンプも2系統用意し、受信状況に合わせてアンプを選択出来るようにすると共に、パッシブ式ATTを追加。
ローカル中継局などのかぶり込みに効果を発揮した。これが、最終版プリセレクタのひな型となっている。
初めて製作した、並四コイルによる外部プリセレクタ。堀場氏製作のものをバラックで再現。
このような剥き出し回路でも効果ははっきり感じられた。
プリセレクタ試作機 ver.2。 (2013年10月製作)
ダイヤルの左右は同調用、中央は結合用。トグルスイッチはローパスフィルタ / 2MHz ON-BYP と RFアンプ ON-OFF
リアビュー。RCAピンジャックは入力端子。ナットはGND。出力ケーブルは直出し仕様。
筐体は厚手のクラフト紙によるもの。そこでボディエフェクトを遮断するためアルミ箔や銅箔テープでシールドを施した。
内部の様子。剥き出しのRFアンプは、2SK241 & 2SK192A のCR直結2段。
ミズホ通信製アンプの回路を再現した。
画像中央のBOXには、2MHzローパスフィルタが収めてある。
試作2号機の問題点とは → Tech Notes
インダクタを並4コイルから、バーアンテナコイルへ変更。
バーアンテナ同士が磁界結合しないよう、個別に収めている。
金属容器へ収めることでアンテナとして機能しないようにしてみたが・・・
外部プリセレクタ参号機の外観。ベース筐体はあられ缶。
パッシブアッテネータやRFアンプを収納している。LEDは動作確認用。
プリセレとしての機能は果たしているが、問題はその外観と強度不足とシールド効果。
安価に仕上げるのが悪いわけでは無いのだが・・・。
長らく、高周波回路は簡易筐体へ収めてきた。空き箱、紙製ボックス、タッパウエア・・・。これらは加工が容易なため、特別な工具無しに実現出来るからだが、高周波系の装置は金属製の堅牢な筐体に収めるべし!をプリセレクタの製作を通し、改めて痛感した次第。
エアバリコンを使うとすると、筐体の強度が無ければまともな同調操作は不可能。バリコン自体も重量があるので、ヤワな箱への装着も無理がある。
バーニヤダイヤルや減速ベアリングを使うことになれば、尚更のこと強固なパネルが要る。ここへきてようやく金属ケース加工の工具を揃えることになった。
またシールド効果は単に金属ケースへ収めればよい、という事ではないことも学ぶことになる。
クラフト紙製のBOXにアルミシートや銅箔テープを貼り、プリセレクタの筐体としたが・・・。
所詮は簡易的な対応ゆえ、金属ケースの代替には成り得ない。
「何もしないよりはマシではある」程度と考えたほうがよかろう。
上の画像にあるクラフト紙BOXに収めてあった並4コイル使用のプリセレクタ回路。LPFやRFアンプを配しており、そこそこ機能していたのだが・・・。
気が付けば同調機能は働かず、増幅回路も全く動作している様子がない。バラック状態では機能するのに、何故に「箱」へ納めるとNGなのか?
これが金属筐体へ回路を収めるトリガーとなった。