バラックでは外来波の影響を直接受ける・・・そんな考えと、バリコンダイヤルの操作に難があるのと手を近づけるだけでノイズが増えることからプリセレクタを筐体へ収めようと考えるも、 適当なケースが見当たらないことや、金属・非金属問わず加工に要する工具が皆無なことも手伝って安易な作業が実現する「クラフト紙製キューブボックス」を選択。 100円ショップで入手出来るのも理由の一つであった。内部パーツ配置など再デザインも安価ゆえ容器を丸ごと交換することが可能なのも魅力であった。
ただし、筐体に収めているとはいえこの状態では高周波信号やノイズは素通りになるため、BOX内部にアルミ箔や銅箔テープを巡らしシールド効果を狙ったのだが、
これがトラブルのトリガーになろうとは無学ゆえ知る由もなかった・・・
謎トラ・アンテナとは、高田継男氏が「ラジオの製作」誌上で公開された、「謎のトライアングルアンテナ」の略称で、誰にでも簡単に製作できる中波受信用パッシブ式ループアンテナ。
バーアンテナ内蔵ラジオと相互に作用し複同調式の共振回路を構成することで、目的局の選択度を上げる効果が得られるのだが、ローパスフィルタを通すとこの効果がまったく感じられなくなってしまう。
結論からいうとピックアップループとレシーバを結ぶケーブルのインピーダンスマッチングがまったく取れていないところへ50ΩIMP設計のローパスフィルタを挿入するわけだから、
効果がなくても当然であろう。
なぜそんなことをしたのか?その根拠が全くないわけではない。謎トラアンテナアンテナのピックアップループは、90pスクエア枠に2回巻き。
プリセレクタから見ると、このピックアップループ自体が「アンテナ化」しており(根拠なき推測だが)、望まぬ信号をLPFで篩にかけようという魂胆だったのだが。結局同調バリコンを回してもピークがないのだからと、単に20m長のワイヤを巻いた非同調ループにアンプを繋いでの運用も試してみたが、ノイズレベルが上がるだけで有意な信号レベルアップは感じられなかった。
次に無学の成せる業は、閉じた金属筐体(プリセレ試作2号機では金属箔)に回路を収めれば、高周波やノイズはそれなりに遮断されるであろう・・・
そんな安易な根拠?によるシールド効果だったのだが、結果は当然NG。同調を取ろうとダイヤルツマミに手を近づければノイズが増える。ダイヤルを留めているネジに触れればノイズと共に感度が上がったりする。ローターシャフトへ直に触れるのだから分からないわけでもないのだが、この時点では筐体シールドの意味を全く理解していなかった。
また紙製ボックスにアルミ箔や銅箔テープを張り巡らせてはあるものの、数多の導体集合体故に接触抵抗が存在する。箔はアース端子と同電位としたつもりだがストレーキャパシティによる結合で成り立っているような状態。故意にサーキットグラウンドと結合していないので、アルミ箔シールドはアースから浮いた状態にあったと云える。バラックでは動作するのにケースへ収めると動作が不安定になるのは、こういった事由も大いに関係していた。
理論的には理解出来なくても肌感覚で「どこかおかしい」と疑念が募り金属筐体へ収めることになるのだが、それでも根本的なところがハッキリしないため試作3号機においても不具合が生じてしまう。解決に至るまでに2人の師の存在がカギとなった。→ こちらへ
伊藤健一 著「アースの話」の中で、(回路と繋がっていない)浮いた金属はアースせよ!とある。プリセレ製作において当てはめると、サーキットGND(=0V = -BATT)は、筐体とガッチリ結合せねばならぬ、と云うことに他ならない。無学の私にとっては、「BATTのマイナスをケースに繋いだら、他の金属に触れた時にショートしないか?」とか、「他の導体と接触した時にノイズを拾うのでは?」「意図せぬ電流がケースを通じて流れるのでは?」などと根拠なき不安が渦巻いていた。
これらについては、無学の私が語ったところで説得力ゼロなので他に譲る。伊藤健一氏による著書「アースシリーズ」を読んでいただくのが賢明であろう。
現在、私が製作した中波受信用補器類は5つのアルミケースに収まってゐるが、各筐体間の抵抗値は0.2Ω以下であり、DC電源入力端子のアース側と各筐体間の抵抗値は0.05Ω以下となっている。各ユニットのサーキットグラウンドは筐体と導通している。こうすることで、以前とは段違いに動作が安定し低ノイズ環境が実現している。筐体に手を触れてもボディエフェクトによる影響は、ほとんど感じない。
RETURN